障がいの有無に関わらず、子どもの育ちと子育てママをサポート
<特定非営利活動法人 子育て支援コミュニティプチママン>

団体と助成の概要

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 子育てサークル活動が盛んな福島県郡山市の地域性を生かし、2005年に発足した「子育て支援コミュニティプチママン」。市主催の子育てサークル代表者会議で知り合った、明るく行動力のあるママたちよって運営されている常設の子育てひろばです。

 震災後、まだ支援の手が子どもにまで届いていない段階から、トランポリンやバランスボールなどを避難所に持参し、子どもたちに遊ぶ場を提供してきました。

 2013年からは、ひろばに浴室とトイレのバリアフリー改修が行われ、身体に障がいのある子どもの入浴介助を始めた他、そのママ同士の情報交換の場づくりなどを行っています。子どもだけでなく親子で様々なサポートを受けられる、市内でも数少ない場となっています。

 

身体に障がいのある子どもも利用できるひろばに

 住宅地にある2階建ての施設から、ママたちの笑い声が絶えないプチママン。1階には完成したばかりのサンルーム砂場や、遊具のある室内遊び場、バリアフリーの浴室が整い、2階には多目的スペースが広がっています。子育て中や子育てがひと段落したママなどが気軽に訪れ、冗談を交わすアットホームな雰囲気。毎週水曜日には、身体に障がいのある子どもや発達障がいの子ども、そのママも利用しています。

 プチママンでは震災前より、身体に障がいのある子どもを持つママのサークルがひろばを利用していました。東日本大震災後に病院でのケアが受けられず、自宅や避難所で家族が介助をしなければならなかったことや、普段の生活の中でも、家庭の浴室では入浴の際に介助する家族の負担が大きいことなど、様々な声が挙がっていました。

 そこで2013年、身体に障がいのある子どももひろばを利用できるようにと、浴室、トイレ、出入口のバリアフリー改修工事が行われました。浴室は段差をなくし、全身の筋肉が緊張して体をうまく動かすことのできない子どもも楽に入浴できるよう、入浴用ベッドが入る広い入口に。シャワーの位置や排水などは、利用するママたちの意見も取り入れながら工事を進めました。また、AEDを設置し、身体の障がいがある無しに関わらず、誰もが安心して利用できる施設を心がけました。

 これらの改修工事が済んだ2013年3月より毎週1回、介護福祉士の資格を持つスタッフのサポートのもと、入浴介助を実施。親子共に楽な姿勢で行えると利用者からは好評で、「子どもに『今日はプチママンでお風呂だよ』と言うと本人も分かるようで、うれしそうな表情を浮かべる」というママからの声も届いています。

 

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2014年1月に完成したサンルームの砂場で。
スタッフの右端が、理事長の佐藤さん。左から3人目が松尾さん。

 

ママへのサポートも充実 

 プチママンでは、身体に障がいのある子どもを持つママのサポートも同時に行っています。週1回、子どもたちが学校へ行っている午前中、情報交換や癒しの場としてプチママンが利用されています。

 日常生活での悩みや「たんの吸引はどうしてる?」など、身体に障がいのある子どもを持つママ同士だからこそ共有できる想いや専門的な話であっという間に時間が過ぎていきます。

 また、ママたちから出る「やってみたい」を応援するため、プチママンでは子どもへのマッサージ講座や、料理教室、アロマ講座などの開催サポートも。スタッフの松尾祐子さんは「障がいのある子どもがいる中で、自分たちでイベントを企画するのは負担が大きいもの。講師の手配や書類の作成などで『やってみたい』を尊重し、サポートできたら」と話します。また「週1回、ここに来ることが楽しみという声もいただいていて、毎週笑いの絶えない時間となっています」とは、理事長の佐藤広美さん。現在、20組を超える親子が利用。専門家の手を借りながら、ママ同士がお互いにサポートし合えるよう目指しています。

 さらに、夏休みには親子で参加できる夏祭りや音楽会も開催。看護師などのサポートもあり、安心してイベントを開催できました。参加したママからは「子どもだけが受けられるサポートは他にもあるが、親子で参加できるイベントは貴重」との声も。子どもからも「楽しい」の表現が多く見られたと言います。

 

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ママからの「やってみたい」を尊重した講座などを週1回を開催。
講師の手配などはスタッフがサポートしながら進める。

 

専門性とネットワークで更なる支援の充実を 

 こうした身体に障がいをもつ子どもをサポートするにあたり、スタッフ向けの研修や勉強会が開催されました。看護師や臨床心理士、理学療法士を講師として招き、入浴介助の研修や障がいのある子どもを持つママへの対応などについて研修を実施。

 参加したスタッフは「現場で活躍する講師の話は大変有意義だった」と話し、具体的な配慮やケアの仕方を学ぶことができました。また、介護福祉士や精神保健福祉士の資格を持つスタッフによる内部勉強会も行われ、知識の向上が図られました。

 松尾さんは、身体に障がいのある子どもとそのママの支援を始めることで「これまで行ってきた子ども支援が、一面的であったことに気づかされた」と話し、様々な子どもが過ごし利用できる場として、サポートを充実させたいと意気込みます。そのため今後は、他団体とのネットワークづくりにも力を入れる見込み。地域全体で子育てをサポートできる体制を整えるため、尽力していきます。

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親子で参加できるイベントも充実。夏祭りでは、
スーパーボールすくいなどが行われ、楽しいひとときを過ごした。


(2014年2月インタビュー実施)