暮らしやすさ

  • 災害公営住宅入居者は4割近くが高齢者
  • 災害公営住宅は独立性が高いため、高齢者が孤立しやすい
  • 高齢者サポートの取り組みが追い付かない現状
  • 高齢者が安心して生活できるための取り組みが必要

キーワード:高齢者の孤立防止、心のケア、生活困窮者の支援、障がい者福祉、パーソナルサポート、引きこもり、貧困、医療、医師不足、労働環境、在住外国人 など

災害公営住宅への入居による新たな課題 ~安心して生活できる地域づくりを~

現在、岩手、宮城、福島の被災3県では、災害公営住宅の整備が進み、仮設住宅からの移転が始まっています。3県の2015年5月末時点の災害公営住宅の整備率は32%、2015年末までで、63%という状況です。他方で、宮城県気仙沼市では2015年度中に約65%、2016年度末までには、94%が整備される予定です。しかし、災害公営住宅への入居が進むに伴い、新たな課題が浮かび上がっています。

高齢者が孤立しやすい災害公営住宅

一般的に、災害公営住宅は仮設住宅に比べ独立性が高いため、周辺地域とのつながりが希薄になりやすいといわれています。十分なコミュニティ機能が形成されていない状況の中、社会とのつながりが弱くなりがちな高齢者が、ますます孤立してしまうことが懸念されています。

岩手、宮城、福島3県の災害公営住宅の入居者のうち、65歳以上の高齢者の割合は36%に上ります(2015年1月現在・毎日新聞調べ)。また、その中には単身で入居している人も少なくありません。災害公営住宅への入居希望者の中で、比較的若い世代は生活再建までの一時的な入居を希望し、高齢者は定住を希望する傾向があることから、今後も高齢化は続くと考えられます。

図
(毎日新聞調べ)

高齢者サポートの取り組み

そういった状況の中、最も懸念される重大な状況が災害公営住宅における「孤独死」のリスクです。 宮城県気仙沼市で、仮設住宅や災害公営住宅の入居者を対象とした医療相談会等を実施している団体によると、2015年2月より入居が始まった災害公営住宅の住民から、昼夜を問わず緊急を要する相談が寄せられるといいます。救急車を呼ぶか、自力で病院に行くか、そこまでではないか、という判断が高齢者自身では難しく、仮設住宅に居住していた頃から付き合いのある団体スタッフに、まず相談があるということです。

行政による対策が取られていないわけではありません。その災害公営住宅内には「高齢者相談室」があり、4人の生活援助員(LSA:ライフサポートアドバイザー)が 9時から17時まで常駐しています。
しかしながら、この4人のスタッフで、気仙沼市九条、田中、田中前、本郷、南郷、田谷、神山地区の仮設住宅や集団移転地も含めた全体を、巡回訪問などでサポートしていることや、スタッフの勤務時間外である早朝や深夜等に体調が悪くなるといったケースもあり、高齢者の見守り体制には課題が残ります。

災害公営住宅入居をもって住民の自立とするのではなく、その後も安心して生活できる環境が整うまで、様々な関係者が連携し、きめ細かく、息の長い支援を続けていくことが求められています。

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