障がいがある子どもと、家族と、地域を結ぶ
<特定非営利活動法人 アフタースクールぱるけ>

団体と助成の概要

 

 障がいがある子どもへの放課後の居場所づくりやその家族への支援などを仙台市内4カ所で行っている「アフタースクールぱるけ」(以下、「ぱるけ」)。放課後の居場所となっている3つの事業所は、91人が利用しています(2014年9月現在)。

 障がいがある子どもが通う特別支援学校やぱるけのような放課後ケアを行う施設は自宅から遠方にあることが多く、自分の住む地域に友達が少ない、地域の人たちに障がいの特性を理解されていないなどの状況がありました。

 こうした中で起こった東日本大震災時には、障がいがある子どもとその家族の多くは、地域の人たちからのサポートを得ることが難しく、困難な状況に直面しました。その経験から、ぱるけでは、日常的に困ったときには地域で互いに助け合える「互助・共助」の関係性の構築を目指し、その啓発に取り組んでいます。また、全国的に取り組みが進んでいない障がいがある子どものきょうだい支援にも力を入れています。

 

いざというとき必要になる地域の助け

 震災が起きたのは放課後の時間帯。ぱるけの事業所は耐震補強され、日頃から避難訓練をしていたため、子どもたちはケガもなく全員無事でした。家族との通信が途切れ、施設内に1泊した子どもたちもいましたが、無事に母親のもとに帰すことができました。安否確認の際も、母親たちの「大丈夫です」という返事にひと安心。順調に適切に対処できたように思えました。

 「それが、反省点でした」と話すのは、ぱるけの代表理事・谷津尚美さん。「ぱるけに通っている子どもたちとその家族は遠方に住んでいて、こちらから助けに行きたくても当時はガソリンが手に入らない状況で、ご家族の『大丈夫』という声をそのまま信じ安心してしまったんです」と振り返ります。

 震災の数カ月後、母親たちにヒアリングしてみると、「知らない人が大勢いる避難所では自閉症の子どもがパニックを起こしかねないと車中泊した」「子どもから離れられず物資調達に苦労した」など、実際には「大丈夫」とはいえない状況だったのです。

 

「ちょこっと・ねっと」のメンバーと代表の谷津さん(後列右)。
この他、35人の有給スタッフがぱるけの活動を支えている。

 

少しの手助け「ちょこっと・ねっと」のススメ

 実情を知るため、谷津さんは独自に児童館と放課後ケア施設の利用者にアンケートを実施。障がい児世帯の約6割が、発災後の子どもの様子に「困ったことがあった」という結果に、普段から地域に理解者を増やす必要性を実感しました。そこで、「ちょこっと見守ってくれる人をたくさんつくっていこう」と、障がい児・者のいる母親約10人で話し合い、1冊で「一般向け」と「障がい児・者の家族向け」を兼ねたパンフレットを作成しました。一般向けには、地域の人からの励ましや行動が障がい児・者の家族の支えになることを紹介。障がい児・者の家族向けには、地域の人たちに理解を求め、困った時に『助けて』ということの大切さを紹介しています。

 地域の一人ひとりに「ちょこっと・ねっと」が浸透するように、児童館や通所施設で理解を促す紙芝居などを紹介した上で、パンフレットを配布。参加した母親からは、「障がいがある子どもの親は迷惑をかけたくないと考えてしまいがちだけど、困っているときに『助けて』という力(受援力)を付けることが子どもを守ることにつながると気づかされた」という感想も。谷津さんは「母親たちは、『支援を受ける側』という意識から、自分から発信をする『行動する側』に変わってきている」と変化を感じとっています。

 

「ちょこっと・ねっと」普及パンフレット。
1冊の両面が表紙になっており、「一般向け」「障がい児・者の家族向け」を兼ねている。

 

気持ちを抑えがちな「きょうだい」をケア 

 もう一つ、活動で力を入れているのが、障がいがある子どもの兄弟・姉妹を対象にした「きょうだい支援」の「あみーごクラブ」です。発災時には障がいがある子どもをきょうだいが見守ってくれて助かったと保護者から声が多くあがりました。その一方で、「きょうだいは幼いころから精神的な成熟を求められ、周囲の気持ちに敏感で体験不足や自己主張が少ないことが多い」と谷津さん。障がいがあるきょうだいがいることを知られたくないという感情など、きょうだい特有の悩みを抱えていることも少なくありません。

 ぱるけでは、障がいがあるきょうだいがいる18歳以上の365人に、子どもの頃欲しかった支援や関わりについて調査。「分かり合える子ども同士のつながりは必要」というニーズを踏まえ、同じ境遇にある仲間と触れ合い、悩みや思いを共有することで負担を軽減する、きょうだい支援活動を行っています。

 あみーごクラブは主に小学生が対象ですが、「中学生になっても楽しく過ごしたい」と言う声を受けて2012年からは「中高生あみーごクラブ」も発足。きょうだい自身が楽しめるボーリング大会やランチバイキングなどを通して、普段話せないことを口にできる機会を設けています。先駆的なきょうだい支援活動を行っている宇都宮の「SHAring Mind of Siblings~きょうだい会SHAMS~」を訪れた際には、活動を見た中高生メンバーから「SHAMSさんでは、障がいがあるきょうだいを紹介するとき迷うことなく発表をしていた。SHAMSさんの方が一歩進んでいるなあと思いました」という声も聞かれました。

 谷津さんは「きょうだいの会に加え、親の会やおばあちゃんの会も開いています。今後も必要な支援を実現していければ」と、障がい児・者とともに生きる地域づくりを広げていく考えです。

 


防災ワークショップなどで、障がい児・者が震災直後に必要だった支援を伝え、
「ちょこっと・ねっと」パンフレットを配布。

 

(2014年1月インタビュー実施)

2012年のレポートはこちら